大倉山ドキュメンタリー映画祭上映作品『魂のリアリズム』の作品紹介です!

2016.03.11 Friday

映画祭実行委員の1人であるベテランカメラマン、高橋愼二さんによる、上映作品のひとつ「魂のリアリズム」についての作品紹介です!

『魂のリアリズム』
大倉山ドキュメンタリー映画祭は、話題の作品ももちろん上映されるが、一般にはなかなか見る機会の少ない作品が上映されるのも特徴だ。
今回、初回に上映される『魂のリアリズム』は昨年度のJSC(日本映画撮影監督協会)賞受賞作品だ。
日向寺太郎監督(『火垂るの墓』『爆心 長崎の空』)は、日本版『マルメロの陽光』(V・エリセ監督の名作)をイメージしたのだろうか?

北海道の大自然の中で黙々と絵画制作を続ける画家野田弘志の創作の過程を実にきめ細かく描写している。「存在の本質の第一原理まで行き着くことのできる世界がリアリズムだ」という野田の世界とはこういうものなのかと現場を見て驚かされる。
美術に関心のある人には是非見ていただきたい作品だ。

この映画は野田弘志の精緻な世界にも驚かされるが、日本映画撮影監督協会がこの作品にJSC賞を与えたのはこの映像の美しさの完成度に対してである。実に静謐な映像である。音も良い。冬の北海道の厳しさがその映像から伝わってくる。撮影は小さな業務用カメラ(SONY HXR-NX5J)で行われたが、清水カメラマン一人だけのロケが多かったという。近年このような小さなカメラで撮影して作品をつくるインディペンデントの映画作家が多くいるが、残念なことに作品のクオリティーを撮影技術が落としていると思えるものが多い。

ドキュメンタリーというと手持ちカメラというイメージが多いが、手持ちカメラはうまく使えばリアリティが表現できるが、手抜きにもなりかねない。小さなカメラでもきちんと三脚を用いた絵は落ち着いた安定した映像が撮れる。
これだけ安定した撮影ができるのは長いキャリアのあるカメラマンの技である。その映像のトーンの一貫した美しさも作品に貢献している。小型カメラでもこれだけの映像が撮れるということをこの映画は実証している。
映像制作に興味のある人にとっても一見の価値のある作品である。

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2017.03.29 Wednesday

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